「文章読本」を入れれば三冊目の谷崎潤一郎。収録されている順に「刺青」「少年」「幇間」「秘密」「異端者の悲しみ」「二人の稚児」「母を恋うる記」がある。印象的だった順では、「母を恋うる記」月明かりに照らされた浜辺の松並木の描写がただただ幻想的。音の描写も綺麗で、こんなに美しい文章は久々ー「異端者の悲しみ」主人公の最低さに読んでいて胸糞が悪くなったが、逆に自らをここまでクソ野郎に描ける一種のサドマゾヒズムは他の作品と通ずる部分があるー「少年」少年らの嗜虐性に満ちた禁断の遊びを見てしまった、という背徳感が印象的ー「幇間」太鼓持ちが誑られていると知りながらも馬鹿を演じる最後のシーンが好きー「刺青」短いながらも艶やかで蠱惑的、誰もが狂っているー「秘密」一番理解に苦しんだが、男性の刺激を求める姿には自分を重ねてしまったー「二人の稚児」情欲に溺れた稚児と仏道に身を捧げる稚児の対比を描いた作品。人間の影の部分を鋭く描く作者では右に出るものはいないのではないか。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
新潮の100冊
- 感想投稿日 : 2016年8月11日
- 読了日 : 2016年8月4日
- 本棚登録日 : 2016年8月4日
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