武道館

著者 :
  • 文藝春秋 (2015年4月24日発売)
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本棚登録 : 2575
感想 : 370

20150609
普段文庫ばかりを読んでいますが、今回は朝井リョウ×アイドル、ということで文庫化を待たず買ってしまいました(しかも直筆サイン入り)。
「武道館」からは「もういちど生まれる」や「少女は卒業しない」とはまた違った印象を受けました。これまで朝井さんは少年少女の「普通」をキラキラした言葉にして表現されていました。しかし、今回は「異物」な「アイドル」を言葉にして表現しています。
アイドルは私にとって憧れの存在です。歌って踊って、いつも笑顔で。それを見てくれる人がいるから頑張れる、それがアイドルなんじゃないかと思います。だからわたしも、るりかの気持ちに自然とすごく共感してしまいました。愛子の大地をどうしようもなく想ってしまう気持ちや、碧ちゃんの菅野さんに会いたくて東京を飛び出してしまった気持ちもすごく分かる。でも、それに涙する、るりかの気持ちだって痛いほど分かる。愛子や碧ちゃんがるりかよりアイドルを疎かにした、とかそういうことではなくて、るりかは今はまだアイドルの器しか持ち合わせていなくて、それはとても小さな器で、だから、きっと愛子の言ってることが分からなかった。でも、それはそれで素晴らしいことだと思うのです。どうしても消費者目線になってしまうけど。るりかに共感せずにはいられませんでした。
それから、武道館は人の幸福を願える場所、というような言葉も印象に残りました。武道館には一度だけ行ったことがあります。確かにそうでした。あの瞬間は誰も他人の不幸のことなんて考えてなかった。素敵な場所でした。

私がこれから選び取るもの。それを正しかった選択にするのは、私自身。これからの自分の背中を押してくれるような言葉でした。


でも、やっぱり少年少女の「普通」を書いた作品の方が好きかな。「少女は卒業しない」は素晴らしい。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2015年6月9日
読了日 : 2015年6月9日
本棚登録日 : 2015年6月9日

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