借りたもの。
科学的に同性愛(特に男性)を解明しようと試みる、導入として良著。
遺伝子や脳、男女の性に関わるホルモンバランスから、何故同性愛者は生まれてくるのか?という疑問に迫った本。
また、男女の性(とその営み)について考えさせられる本でもあった。
異性愛者の短絡的な発想で「同性愛者は生殖(繁殖)しない無為な存在」というものに対する反論(というか、繁殖しないなら何故絶えないのか、太古の昔から同性愛者は存在するのかというパラドックスを解明する)
セクシャルマイノリティと言われながらも、それはタイトルにあるように「クラスに一人いる」くらいの、決して珍しい存在ではない事を強調している。
同性愛は疾患ではなく、女性由来の遺伝子の可能性、それも生殖・多産に関わる遺伝子の影響を指摘。
もし同性愛が遺伝的なものであるなら、彼らの遺伝子の存在は人類が地に満ちるために非常に重要なものを持っているということになるようだ。
また、歴史の中での“同性愛の定義”が非常に曖昧である事を指摘。
“男で男が好き”なのか“女人禁制ゆえ、女の代わりとして美少年が好き”なのか、判断が難しいと……
男性同性愛者がよく「女性的」と目される事について、また芸術・芸能方面で才能を発揮する所以についても解説。それは脳の構造が女性的かつ、その行動力は男性的であるという、2つ要素が組み合わさっている事に由来する。それを科学的に解説。
“科学的”と書いたが、そのデータはまだまだ不十分で、二転三転することを著者自身も承知している。
でも同性愛が遺伝子の影響というのは実感が無い……むしろ最もミニマムな人間関係、家族関係の要因が大きいのでは?ギー・コルノー『愛することに「臆病な人」の教科書』(http://booklog.jp/item/1/4062641038)では2行ほどしか触れられていなかったが……
この本ではそれについて一切触れられていなかった……
思えば、同性愛者が嫌われる原因は、歴史の中で様々な後付がされていた訳だが……
現代ではAIDSが男性同性愛者に多かったため、差別の対象になっていた。
しかし、それは“男性同性愛者”だからではなく、男がすぐセックスしたいモードであること、男性同性愛者同士ではどうしても双方が顕著になってしまったのであろう事が垣間見れた。同性愛だからではなく、男の性(さが)の問題だったのだ。
- 感想投稿日 : 2016年3月9日
- 読了日 : 2016年3月9日
- 本棚登録日 : 2016年3月4日
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