学歴・階級・軍隊: 高学歴兵士たちの憂鬱な日常 (中公新書 1955)

著者 :
  • 中央公論新社 (2008年7月1日発売)
3.60
  • (4)
  • (8)
  • (12)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 154
感想 : 19
4

なんとなくタテマエの平等空間を実現していた一高はある種のモラトリアム空間だったのではないかと思いました。そしてまだ階級社会であった当時ではそのモラトリアムにいられる幸福な青年の総数自体が少なく、其れ故彼ら高学歴者と世俗との乖離が目立ち第二次大戦、敗戦という流れの中でモラトリアム期間の急激な中断を余儀なくされたのが彼らの憂鬱であり悲劇であったとも思います。<br>
ノーブレス・オブリージュと言う言葉が文中良く出てきますが、一高生が憧れた西洋のノーブレス・オブリージュには軍歴も含まれていたと考えられるのに、軍部が日本の事情を考慮したエリートの軍への取り込みをしなかった事と、エリート層の方でも世俗から離れることを美徳として軍に対して無関心だったことが、陸軍をエリートコースに乗る余裕も無く士官学校へ入った優秀な田舎の青年将校で満たす結果となり、其れが第二次大戦における軍部の暴走の遠因になったのでないかと推測すると、唱えるだけで掘り下げることをしていないように見える高学歴者達の言う「ノーブレス・オブリージュ」も空しいものに見えます。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 日本歴史
感想投稿日 : 2009年3月12日
読了日 : 2009年3月12日
本棚登録日 : 2009年3月12日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする