熱苦しくて好き。
自分には「バレエしかない」と、本当にそれだけで生きていく昴。まっすぐすぎて痛々しいけれど、こんなに荒れ果てた我が道でも、天才が突き進めばローマに通じるのだな~。
クライマックスはボレロ。
かつて刑務所の慰問公演で囚人たちを嗚咽させた昴が、今度は、いよいよ一般の観客をかき乱す。やわな感動を通り越して、苦しめる。ここがこの作品の神髄だと思う。
囚人は自由を渇望する。でも、普通の人間は、檻の外でだって昴のようには突き抜けられない。自由を持て余す。その点、昴には「バレエしかない」。その不自由さが眩しい。
「あんたは、これで生きるの死ぬのという踊りをしたことがあるかい」
「こいつだけ追いつめられ方が違うんだ」
そんな昴を唯一惑わし、引き上げたダンサーが、ギエムを彷彿とさせるバレエ界の女王、いわば正規の道を通ってきた天才(プリシラ・ロバーツ)というのが、またすごい。昴でも、まだ甘い。
早く続編を読みたい!
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- 感想投稿日 : 2016年9月1日
- 本棚登録日 : 2016年8月30日
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