2008年の作品、話はほぼ知ってたのだけれど、やっぱりぐっと来るイーストウッド作品。
朝鮮戦争の兵士であった主人公の老人は、非常に屈折した性分でもあり、子にも孫にも恵まれているのに、自らの価値観を彼らと共有できずに孤独。
グラン・トリノは1972年フォードのビンテージ・カーだそうで、その老人の誇り・尊厳の象徴として置かれている。
白人が減り、マイノリティだった者たちが増えていく街。強い抵抗を覚え、ときに差別感を剥き出しにしながらも、マイノリティを受け入れ 「偉大なるアメリカ」を引き継いでいく。 物悲しく、いささかマッチョな静かなる英雄譚。
...なんだけれども、隣家の頭の回転が早くて勝ち気ながらも、つねに他人への気配り・思いやりを湛えた娘スーが印象的。英語がわからない大人たちを助け、内気な弟にも優しいが、ナメられないだけの度胸も頭の良さも備えている。
老人が、隣家の存在を受け入れていくのも彼女に引っ張られてのこと。
伸びやかに未来を夢見るべき素晴らしいキャパの持ち主。
そんな彼女が、同族のチンピラの逆恨みのターゲットにされる。。あっさりと描いているが、衝撃的。
なんだかだ言っても、暴力を振るわれれば、女性は男性にねじふせられてしまう。
どんなに批判しようと罰しようと、そんな暴力がなくなることはない。 その背筋が凍るような事実が、老人の戦場での罪と重なる。
少年は老人の誇りを受け継いで、明るい道を走っていくが、少年の姉 スーは大丈夫だろうか .......
そればかり気になってしまった。
- 感想投稿日 : 2017年12月8日
- 読了日 : 2017年12月8日
- 本棚登録日 : 2017年12月8日
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