茗荷谷の猫 (文春文庫)

著者 :
  • 文藝春秋 (2011年9月2日発売)
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本棚登録 : 1135
感想 : 143
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・人に薦められて、そのときたまたま読む本もなかったので読んでみた。猫ものかなと思っていたがそれは良い意味で裏切られた。この本で木内昇が好きになり、他の色々も読めたので、出会えて良かった一冊。
・江戸~昭和の東京を舞台にした、ゆるーくつながる連作短編。繋がりかたの「露骨でなさ」が、人の世ってこういうものだよなあと思えて良い。特に1.染井吉野の登場のしかたが好き。作り手の望んだ通りにこの桜は東京に浸透していったんだな、と。
・2.黒焼道話、これけっこう強烈で好き。この主人公が4.では「東京で成功した」と誤解されてるところがまた切ない。
・3.表題作だけど、私はあまりぐっと来ず。
・4.田舎から東京に出てきて旋盤工としてせっせと働いて生きていくつもりだった青年が、文学に出会ってしまい、逃走。面白い。
・5.人と関わりたくなくて、嫌なやつになって悪評たってほしいと思い人の嫌がることをしているのに、なぜか裏目に出て(?)感謝されたり好意を持たれたりしてしまう青年の話。これ、同じ筋書きでも、作家さんによっては、漫画っぽいタッチで面白おかしくはあるけどただそれだけ、みたいなつまらない作品になりそうなところを、こうも品良く書けるとは。すごい。
・戦中、戦後の6.と7.は哀しい。
・8.美しかった、憧れだった母の老いを受け入れがたい娘の話。親の老いって、親が生きているなら、自分が年をとっていくなかで必ず経験することなのに、そうなるまで全然想像していなかったことだなーと思う。
・9.3.に出てきた男性の家の話でこの作品しめくくり。きれい。
(2015/3/8記。数年前に読んだものを再読。)

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 最近の小説
感想投稿日 : 2015年3月10日
読了日 : 2012年11月21日
本棚登録日 : 2012年11月15日

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