マリアビートル (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA (2013年9月25日発売)
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感想 : 210
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以前読んだことのあった前作『グラスホッパー』を読み返し、準備万端で読みました。『マリアビートル』。
前作の登場人物は粗方退場してしまったので、続編と言ってもどの程度の繋がりが?と思いながら読み始めました。結果として、こちら単体でも楽しめる作りだとは思いますが、併せて読んだ方がより楽しいおはなしだと感じました。読み返しておいて正解。
で、段落(視点)が変わるたびにハンコでそれが表され(わざとナナメに捺された箇所もあって細かい!)、登場人物それぞれの行動が噛み合って物語が進んでゆく面白さは前作同様。今回はほぼ全員が新幹線車内という狭い環境にいたため、一般人の目をかいくぐり接触する業者たちがスリリングでした。
おはなしが面白かったのは確かですが、キャラクターの魅力に重点を置いて読んだ人間としては、もやもやする一冊でもありました。というのも、今作では「檸檬」と「蜜柑」の二人がとてもお気に入りだったからです。
視点が色々変わるとはいえ、今作の主人公は七尾君であると思います。七尾君も果物の二人も、大っぴらには言えないようなお仕事をしている、どちらかと言えば悪い人たちです。そして、物語の中でそれぞれが役割を持って活躍しています。それはよくわかった上で、私は、檸檬と蜜柑の最期が悲しくてなりませんでした。そこで死ぬのが彼らの役割だとわかっていても、七尾君なんて嫌いだ、と思いました。ちなみに前作では「蝉」が好きでした。彼も死んだ。辛い。
王子のような、同情の余地のない悪役は清々しくていいですね。どこまでも醜悪な精神が素晴らしかったです。彼に貼られた意地悪なディーゼルのシールに蜜柑が気付く場面を思い出すと涙が溢れます。
文句が多いような感想ですが、キャラクターに感情移入して泣いたり怒ったりさせられるのはいい作品だからですね。話の筋を忘れた頃にまた読みたいと思います。きっと読むたびに「七尾コノヤロー」と思うことでしょう。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2014年10月10日
読了日 : 2014年10月10日
本棚登録日 : 2014年10月10日

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