きみのためのバラ

著者 :
  • 新潮社 (2007年4月1日発売)
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本棚登録 : 302
感想 : 73
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初読み作家。タイトルに惹かれ購入。
様々な場所で、ただ通り過ぎるだけだった人たちが一瞬の奇跡のように出逢う。“会話”を交わせなかった一日の終わりのディナーで目の合った男女。妻を殺して義父から逃げる男の出会った“逃げる人々”の教えてくれた奪い合う気持ちを攫ってしまう言葉。幸せになるはずだった花嫁の、絶望としなやかなというには苦しい強さ。父との関係に罅を持つ少年の切ない変化への憧れと小さいが確かな前進への気配。異国を舞台とした(沖縄も入っているけれど)その場所の空気とともに織られる他愛ないが故に後から意味を持つ一瞬を描いた短編集。洗練された文章というのかもしれない。やわらかさというよりしなやかさ、そして芯の真珠のような発光で物語を照らす。久々に好きになった男性作家。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: さまざまな生活
感想投稿日 : 2012年2月11日
読了日 : 2012年2月3日
本棚登録日 : 2012年2月11日

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コメント 1件

猫丸(nyancomaru)さんのコメント
2012/05/07

「他愛ないが故に後から意味」
翻訳や詩もする池澤夏樹だから、ちょっとしたコトに意味を持たせるのが上手いのかなぁ~

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