レビュー by amacumoさん
チェロ奏者ではなくなったとき、大悟は一度死んだのだろう。
その彼が、”忌むべきもの”とされる死者を送る納棺師となる。
楽器は命を持たないけれども、奏者によって命を吹き込まれ、
人の心を震わせるメロディーを奏でることができる。
人間は生きている間はたえず躍動し、温度を伝え合うが、
死んだあとは嫌悪や悲哀など、多くのマイナスの感情をたたえて
ただ葬り去られるものとなる。
もう自分では、自分の音を奏でることができなくなってしまった死者を前にして、
残された人々は自分たちには何もできることがないという無力感や
抗いがたい死への恐怖、
死を招いた原因から逃げてきたことへの罪悪感から
死者を遠ざけ、触れてはならないものにしてしまう。
だから死者を扱う納棺師は禁忌を侵す者として
「罪人」のレッテルを貼られる。
だからこそ死者を送る納棺は後に残された者たちのための儀式となる。
日々音楽から慰めや勇気を得るように、
死をきちんと奏でることで、人々は贖罪し、安堵と生の実感を得る。
「死んだものはうまいんだよなあ、困ったことに。」
レビュー登録日 : 2011年12月29日
引用
- 登録されていません。






コメント
まだコメントはありません。