人は大病を患ったあとその苦境の果てに目の前の視界が今までとはまるで違ったように開けるという。まったくの同感である。考え方や思考の広がりが病の淵においてなお深くこんなにも生きていることが幸せに思える瞬間はないという。これは借物の肉体だと妙にありがたく思える。自分への審問は日常なかなか到達できる行為ではない。病床において捧げられるせめてもの救いだと思われる。苦しいのに何が救いなの?それは傷が癒えてからやってくる。地下水脈から湧き上がるようなその褒美は何物にも変えがたい指針を手にしたような救いになる。だからそれまでは耐えて耐えて待ってろと。病気は単に苦しいだけのものではない。
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- 感想投稿日 : 2009年11月3日
- 読了日 : 2009年11月3日
- 本棚登録日 : 2009年11月3日
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