レビュー by arcanum1017さん
本書は2008年の三笠フーズによる汚染米の事件を皮切りに、その裏にある、農協、農家、そして国家の間にある構造的な問題を提起している。
内容は農協の歴史的な設立の経緯、農協・国政・官僚の間にある悪質な利害関係、そして昨今の国内、そして国外の情勢の変化による構造の揺らぎ、最後に筆者の今後の日本の農業の方向性を示している。
新書ということもあり、そのロジックを裏付ける数字の信ぴょう性がはたしてあるかどうかはわからないが、日本の農業を取り囲む利害関係が時系列を追って陰鬱に生々しく描かれている。
既得権益を守るために農協、国政、官僚は制度の仕組みを悪用し、企業的な農業は衰退し、結果、日本の農業はどんどん衰退していく。
昨今、日本の農業の就業者人口は減り、かつ高齢化が進んでおり、農協の政治的なポジションが揺らいでいるが、それでもまだ、彼らが持つ情報量・資本の威力は大きく、崩すのは難しい。
おそらく崩れるのは国家が破たんした時だろう。
本書P112「組織はいったん作られるとそれ自体の存続のために一人歩きを始める。」ということばが妙に浮き出ていたように思えた。怖いわぁ。
P188の自由貿易と食料安保を両立させる方法として「平時はアメリカから小麦を輸出しながら、米を輸出する。
外国からの輸入が途絶えたときには輸出に回していた米を食べるのだ。」とあるが、これって可能なのか。
日本のコメの海外での価値。
安全・安心って言われているけど。
正直安全/安心の価値については最近の原発の問題然り、懐疑的。
農産物市場の透明性と、その透明性を構築するロジックに息を吹きこむ哲学が今後一層重要だと感じた。
レビュー登録日 : 2011年04月22日
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