大転換する日本のエネルギー源 脱原発。天然ガス発電へ (アスキー新書 199)

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  • アスキー・メディアワークス (2011年8月10日発売)
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著者がJOGMECの人ということもあり、天然ガス偏重で、我田引水な印象を受けるが、様々なデータを用いて解説していて勉強になる。

本書の主張は、今後原発の新増設が難しくなるので、その穴埋めとして天然ガスを使ったコンバインドサイクル発電および分散型のガス発電の導入が良い、というもの。


以下メモ


火力発電の種類は「汽力発電」「内燃発電」「ガスタービン発電」「コンバインドサイクル発電」の四つに大きく分けられる。

「汽力発電」は、蒸気の力でタービンを回転させる最もポピュラーな発電方式。LNGや重油、石炭などを燃焼させた熱を利用して発電する。
「内燃発電」はディーゼルエンジンなどの内燃機関で発電し、小規模発電として使われている。
「ガスタービン発電」は、軽油や灯油、LNGを燃料にして、燃焼ガスでタービンを回す。高出力のため、電力の需要ピーク時に活用されているほか、小型で起動時間も数十秒を早いため、災害時の非常用電源として活躍している。
「コンバインドサイクル発電」は、ガスタービン発電と蒸気タービンによる発電を組み合わせたシステムで、発電した後に排気されたガスの排熱を使って、もう一度蒸気タービンを回す非常に効率の良い発電方式。


ここ数年で世界のエネルギー地図は大きく変わり、天然ガスの利用機運が日増しに高まっている。その背景には、採掘技術の革新に基づく「シェールガス革命」がある。硬い岩盤層内に存在し、これまで商業生産は不可能だとされていた天然ガス(シェールガス)が、米国で開発されたハイテク採掘技術により、低コストでの採掘が可能となった。このシェールガスは世界中至る所に大量に埋蔵されていることが確認されている。また石炭層に含まれるメタンガスであるコールベッドメタン(CBM)などの新型ガスも含めると、採掘可能な天然ガスは膨大な量に上ることが判明している。


天然ガスは環境性で見ても埋資源量からみても、将来のエネルギー源の切り札となる可能性は高い。

一方、天然ガスのCO2排出量は実質的に石炭と同じ、というメタンリーク(漏洩)説も存在する。天然ガスは燃焼時のCO2排出量は石炭の約半分であるが、パイプラインから輸送される際にメタンが2~3%漏れるため、これを含めると天然ガスは石炭と同じ温暖化効果があるというもの。他にも、天然ガスには他のエネルギー源に比べて貯蔵性、輸送性が悪いという欠点がある。

天然ガスの一般的な輸送手段はパイプラインによるもので、数百kmごとにコンプレッサーで高圧をかけて輸送する。この方式がコスト的にもエネルギー効率的にも有利であることから、世界の天然ガスの9割以上はパイプラインを使って輸送されている。もっとも、パイプラインにも採算分岐点は存在し、陸上であれば4000km、海底で1000kmを超える長距離輸送の場合はLNGによる輸送に比べてコスト高になる。

LNGは天然ガスをマイナス162度まで冷却して液化し、600分の1の体積にまで圧縮したもの。近隣に大ガス田のなかった日本では、天然ガスは100%LNGの形で、専用の保冷タンカーによって輸送されている。

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感想投稿日 : 2011年9月30日
本棚登録日 : 2011年8月10日

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