西原理恵子の太腕繁盛記: FXでガチンコ勝負!編 (新潮文庫 さ 66-2)

著者 :
  • 新潮社 (2012年2月27日発売)
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感想 : 11

西原理恵子師匠がリーマン・ブラザーズが破綻する三日前にFXに1千万つぎ込んで吹き飛ばした壮絶な記録です。シロウトがレバレッジ200倍という狂気の世界に足を踏み込む理恵子師匠の侠気にカンパイです。

僕の好きな漫画家に西原理恵子と言う人がいる。僕は彼女のことを畏怖と尊敬の念をこめて
「姐さん」
と呼んでいる。実は一回、僕は彼女に会っている。それは夫である鴨志田穣氏が癌で逝去した折に彼女の計らいで故人をしのぶお別れ会を開きたいといっていたので、僕は当時勤めていた会社の社長とケンカしてまでここに参加した。思ったよりも彼女は小柄で、献花する葬列者に対して、一人一人丁寧に頭を下げていたことがとても印象に残っている。

これは、あるFX(外国為替証拠金取引)の会社の企画で彼女自身が外国為替証拠金取引で相場を張って、それを漫画にするというものでウェブサイトに当時掲載していたものを単行本にしたものだった。最初にこの企画を聞いたときに私はパソコン画面の前でエヴァンゲリオン(新劇場版ではヱヴァンゲリヲン)の碇シンジ君がダミープラグによって暴走した初号機によって使徒化した三号機を凄惨に解体され、最後に親友のトウジ(新劇場版ではアスカ)が乗っているエントリープラグを握りつぶす(新劇場版では噛み砕く)時のように叫んだ

「やめろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっっ!!!!!!!!!!!!!!!!」

と。彼女は若いころ、マージャンをはじめとするさまざまな博打で負けた合計が彼女いわく
「5000万円以上は負けてます」
だそうで、今回のこの企画では
「久しぶりに体を張って笑いを取りたかった」
という理由で自分の夢であるアトリエの手付金1000万円をかけてレバレッジ200倍という狂気の大勝負に出たのである。はっきり言って、狂っているとしか言いようがない。相場の「そ」の字も知らない人間が数ある相場の中でも最も難しい(と僕は勝手にそう思っているが、それが間違っていないと固く信じている)為替相場に乗り込んでいくというのは正気の沙汰ではないとしかいいようがない。

そして、彼女が相場を張ったその三日後に投資銀行のリーマン・ブラザーズが経営破綻し、その後はご存知のとおり世界経済は未曾有の危機に陥っていくわけである。当然、彼女が張った1000万円は泡のように消えていった。しかし、転んでもただではおきないのが我らがサイバラリエコ。この経験を漫画にして、なおかつNHKスペシャル
『マネー資本主義』
にゲストとして出演したのだった。

僕は必ずこの本を買うだろう。それがミセス・ワタナベ(外国為替証拠金取引で儲けた日本の主婦たちのことを欧米ではそういっていたことがある)になり損ねた彼女に対するせめてもの敬意を表して。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2012年3月18日
読了日 : 2012年3月18日
本棚登録日 : 2012年3月18日

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