救命: 東日本大震災、医師たちの奮闘

  • 新潮社 (2011年8月31日発売)
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地震と津波が全てを奪い去った東北の各地で、懸命の医療活動を行った9名の医師たちの貴重な証言を記録したものです。どの医師の語った経験も壮絶そのもので、彼らが人間と医師の尊厳を失わなかった姿に打たれます。

この本は甚大な被害を及ぼした3・11の東日本大震災の時に、津波が全てものを押し流したあとの現場で医療活動に当たった九人の医師の証言を基にしたものです。どの医師も壮絶な『命の修羅場』を語っており、感動よりもむしろ、こうまですさまじい意状況に身を置きながら、医師として、人間としての尊厳を失わずに粛々と自分のなすべきことをしていた、ということが書かれており、そこにはただただ頭の下がる思いでありました。

その中の一人は自分の中に『お前は医者じゃないのか!?』という声が聞こえ、自身の仕事に一区切りをし、東北大学で研究をしようという直前に遭った震災直後の現場で医療活動を行っていた、という話はとても自分の印象に残っています。次に、震災で心の傷を負ってしまった方に寄り添うような治療をしていた精神科医も最初は「ハイ」になって、しゃにむに医療活動をしていたそうですが、後にゆり戻しが来て何度も何度も喪失の悲しみで声のかれるまでおお泣きした、というエピソードも強く僕の心に残っております。

阪神・淡路大震災で学んだことのひとつとしてご年輩の方が震災で孤立したときに精神的な我慢の限界になって自ら命を絶ってしまったことや、孤立死をしてしまい、いかに東日本大震災のあとに孤独死や自殺を食い止めることが大きな課題であり、阪神・淡路大震災の教訓がいい意味で生かされたのだな、ということを感じました。まだまだ復旧のめどはたちませんが、ここに書かれているお話はなんともすばらしいものがありますので、ぜひとも風化してほしくはないと思っております。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2012年3月4日
読了日 : 2012年3月4日
本棚登録日 : 2012年3月4日

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