国が亡びるということ

制作 : 佐藤優 
  • 中央公論新社 (2012年4月24日発売)
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震災復興、TPP、ギリシア危機、中国・ロシア・北朝鮮との付き合い方…小泉政権下ではともに対極の陣営に組みしていた二人が語る『これからの日本と世界』について。僕はこれを読んで竹中氏への認識を改めました。

はじめにひとつお断りしておかなければならないことがあって、今まで僕は竹中平蔵教授のことを『小泉政権下で新自由主義政策を推し進め、格差社会を生み出した張本人の一人』と思っておりましたが、この対談を読んで、そういった認識は『誤解』であったのだなと思いました。

本書は竹中平蔵氏と佐藤優氏、小泉政権下では相反する立場であった人間が対談という形式で『現在』の政治や国際社会を語るというものです。竹中氏は経済から、佐藤氏は外交・インテリジェンスからそれぞれ異なった視座から語られる言葉の一つ一つが非常にスリリングな内容となっておりました。

竹中氏の消費税増税の是非をめぐる発言に始まって、小泉政権の行った政策から喧々諤々となっているTPP参加の意義。これをロシアや中国はどのように見ているのか?さらには世界的に見た日本の官僚の『低学歴』についても衝撃的なことが語られ、過去問を解くことに特化し、指定された時間内で答案に再現する力のみに長けていても、それは『入場券であって十分条件ではない』という話や、中世のスコラ哲学における『悪魔論』を引き合いに出して現在の民主党は『正解を知っているからこそ、「間違い」ばかりを選んでエラーを積み重ねている』というパンチの聞いた皮肉には思わずにやりとさせられました。

さらには現在世界でもっともホットな話題であろうイランとイスラエルの問題では佐藤氏のインテリジェンス能力の真骨頂が発揮され、裏ではさまざまな国やインテリジェンス機関が動いていることや、ヨーロッパにおけるギリシャ問題も竹中氏は経済の視点から、佐藤氏は地政学、世界史的な立場から解説されてあり、ギリシャは東ローマにルーツを持った国で『ローマ法』の伝統を持っていないという点で厳密には『ヨーロッパ』ではない。という分析は新鮮でありました。

『人間という動物が常に成長をしてきたのは、殺し合いをせずに生き残っていくための英知なのです』という最後のほうで語られている言葉がとても印象に残っていて、『喰うか喰われるか』の国際社会の中でどのように生き残っていくかという問いにヒントを与えてくれるものであると思います。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2013年3月27日
読了日 : 2013年3月27日
本棚登録日 : 2013年3月27日

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