野獣降臨 (新潮文庫 の 6-1)

著者 :
  • 新潮社 (1985年8月1日発売)
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本棚登録 : 77
感想 : 3

岸田戯曲受賞。
「大脱走」と2本立て。

最も分かりにくかった時期の、野田秀樹の作品で、
とにかく分かりにくい。
しかも、舞台でしか分からない仕掛けが多く、文章だけで読んでも
なんだか分からない(バラバラになった鏡が集まるとか。綱渡りなども
実際、どうやっていたのか不明)

話は、舞台が、地球と、月に分かれていて、
お互いが鏡のような存在。
地球には、月から来た、半分獣のやつが、疫病をばらまき、
月には、地球から来た、半分人間のやつが、疫病をばらまく
みたいな話。
アダムの肋骨を1本抜いて、イブを作った話にたとえて、
肋骨を一本盗まれた男が、その骨を探す話や
月から地球を見上げる、清少納言と、紫式部。
15少年漂流記や、アポロの月面着陸、
古事記に現れる、骨なしの怪物「ヒルコ」なども
からめて、話は進むが、とにかくまとまりが無く、意味が分からない。

しりとりとか、伝説(でんせつ)、節電(せつでん)、漏電(ろうでん)、また
伝染(でんせん)、電線(でんせん)など
ダジャレというか、言葉遊びで、強引に話が進んでいくので
いま、誰が、何をしたくて、何をやっているのかが、
さっぱりわからない、という感じになる。

人偏と何かを足すと、とか、しりとりや、言葉遊びなど、現在の野田秀樹にもつながっているモチーフはあり、そこら辺は興味深いのだが
とにかく分かりにくい。作者自身も、まとめきれていないのではないか。
芝居で見れば、もう少し分かりやすいかもしれない。

また、馬鹿は、「タブー」に再登場するし
ヴォネガットの引用、愛は負けても親切は勝つ、も登場
後に松尾スズキが、このフレーズをもとに親切伝3部作を作る。

「大脱走」の方は、「キル」で再登場するチンギス・ハーンが
出てくる。甲子園の話を絡めたコメディで、こちらの方が分かりやすい。

読書状況:いま読んでる 公開設定:公開
カテゴリ: 戯曲
感想投稿日 : 2011年1月20日
本棚登録日 : 2011年1月20日

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