この世で生きている限り、様々な恐怖や不安が尽きることがないのであるが、それを克服することができるのか、というテーマの講演を集めたもの。クリシュナムルティ師は、あるカルト教団の教祖(すでに故人)であり、役に立たない説法ばかりのあらゆる既存宗教に対する激しく批判していたみたい。本書のテーマである恐怖については、言葉を変えながら「恐怖の根本を見つめるよう努力しなさい」と言うだけで、具体的にどうすればいいのか何も教えてくれないので困ってしまう。でも、「人生における一番の問題は恐怖である」とか「人類は何千年もかけて宗教や哲学や科学を発展させてきたが、恐怖の解決に関しては何も進歩していない」といったクリシュナムルティ師の世界観は、人生の9割以上が恐怖によって駆動されている私にとって、とても深く納得できるものがある。
本書は、いきなり本編を読み始めると、禅問答のような講演が並んでいて読み進めるのがつらいので、最初に翻訳者による巻末のあとがきを読むのがいい。翻訳者はクリシュナムルティ師の思想の利点と難点をよく理解しており、一般人との間の懸け橋になれる人である。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
哲学・論理学
- 感想投稿日 : 2012年12月16日
- 読了日 : 2012年12月12日
- 本棚登録日 : 2012年12月15日
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