2014.10.7 am2:37 読了。村上龍は初読。今まで読んできた小説とは比にならないほど引き込まれた。残酷なシーンは多い。だけど、読んでいる最中、不思議と怖さは感じなかった。『ジェノサイド』は比較対象にならないほど残虐な場面が多々あるのに、その描写に対して嫌悪感はわかなかった。『ジェノサイド』を読んでいるとき、目を覆いたくなったのは、残虐なシーンから目を逸らしたかったのではなく、そんな残酷な事実をあまりにも簡単に描写することで済ませている小説のなかの現実と、私が今確固たる意識を持って生きているこの空間に重なるものがあったためかもしれない。世界各地で起こっている紛争などを、ほんの1,2行の言葉ですませて、知らぬ顔を通している現実に。
ただ今この感想を書いてる最中に、残酷な描写のイメージが途切れ途切れに浮かんできて、怖くなってきた。今日は眠れないかもしれない。そしてこの本を通じてみた景色はしばらく頭から離れそうにもない。時間が経つにつれ、主人公の心情に近づいている感じがする。続編もあるそうなので、もう少し落ち着いたら読みたい。
「すべての差別は、勇気とプライドのないところに、世界にむかって勇気とプライドを示そうという意思のない共同体の中に、その結束と秩序を不自然に守るためにうまれるものなのです」(143頁)現在の日本、自分自身の姿と重なり、ゾッとする。
本書を読了後、何かが変わった。見える景色の色が。今まで見たことのない色。本を読んだら見える景色が変わるということはこういうことなのかと久しぶりに実感。
- 感想投稿日 : 2014年10月7日
- 読了日 : 2014年10月7日
- 本棚登録日 : 2014年10月7日
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