丁寧を武器にする

著者 :
  • 祥伝社 (2012年11月1日発売)
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本棚登録 : 241
感想 : 25

関西の超有名パティスリー、「パティシエ エス コヤマ」のオーナーパティシエである小山進氏による初のビジネス書。
人気商品「小山ロール」の開発秘話や、独自の人材育成法、商品作りや店作りに対する熱い思いが綴られている。
コヤマファンなら気になる「なぜ2号店を出さないのか」「なぜ兵庫県三田市という辺鄙な場所に店を構えたのか」という疑問にも答えている。
洋菓子作りや店作りに関する部分は非常に興味深い話が多く、得るところも多い。
小山氏の作る洋菓子は「コヤマイズム」とも言うべき独特の「思想」で貫かれている。
商品一つ一つに「ストーリー」があり、「伝えたい思い」で溢れている。
洋菓子に限らず、包装や店の外観にも異常なほどのこだわりを見せ、決して妥協しようとしない姿勢に思わず「神は細部に宿る」という箴言を思い出してしまう。
コヤマイズムが幼い頃の経験を懐かしむノスタルジーをもとに作り上げられた点は意外であった。
小山氏の原点は野山を駆けずり回り昆虫採集に精を出した自分であり、寡黙な菓子職人の父親の背中を見ていた自分なのだ。
洋菓子作りにおいてここまでノスタルジーを表現するパティシエはそういないのではないか。
この点だけでも読む価値がある。
しかし、人材育成の部分に関しては正直言ってあまり参考にならず、読んでも「まぁそりゃそうだよな」という感想しか出てこない。
もう少し洋菓子作りや店作りに対する独自の「思想」を深く掘り下げて述べても良かったのではないか。
そうしておけば他にない唯一無二の本になっただろう。
会社の中でどう振る舞うべきか、上司との関係はどういうものにすれば良いか、新入社員の心得、などこの本で書かなくてもよいことが必要以上に紙数を割いて書かれている。
他のビジネス書でも散々書き尽くされていることだし、本書であえて小山氏が普遍的な人材育成論を述べる必要は全くない。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2014年6月22日
読了日 : 2014年6月22日
本棚登録日 : 2014年6月22日

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