戦後実際に起こった光クラブ事件をモデルにした小説。
超合理主義である主人公山崎誠は、一高、東大法学部に進学するほどの秀才。一方で、過剰な自意識を持っており、随所に出てくる『』で囲われた心情の吐露は、彼が尋常ならざる自意識の持ち主であったことをうかがわせる。
戦後の混乱の中で、彼は「太陽カンパニイ」という高利貸しの会社を設立し、みるみるうちに大きな額のお金を動かすようになる。しかし、彼は物質の豊かさが精神的な豊かさにつながるとは考えていない(この辺りの哲学的な観念は私の読解力が足りなくてよくわからん)。女が精神的に自分を愛したとき女を棄てることを画策するあたりに、歪んだ人格が垣間見える。
物語の最後に、彼の幼少期の回顧シーンがある。大きな展示用の鉛筆の模型(非売品)を手に入れたいと強く願った日々。法外なお金にしても、輝子にしても、子供のころに欲しがった鉛筆の模型にしても、手に入れられないものを手にいれるプロセスを楽しみたかっただけなのかな。「数量刑法学」の研究を続けていたら彼は、私たちの社会はどうなっていたのだろうか。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
現代文学
- 感想投稿日 : 2016年12月14日
- 読了日 : 2016年12月13日
- 本棚登録日 : 2016年12月13日
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