キャスターという仕事 (岩波新書)

著者 :
  • 岩波書店 (2017年1月21日発売)
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著者はNHKで「クローズアップ現代」のキャスターとして
23年間勤めた。
その現場での経験した生の声と、スタッフ達との番組製作に奮闘する
姿がカッコイイ。

アナウンサーとニュースキャスターの違いって分かりにくい。
簡単に言うと、アナウンサーは原稿どおりに正確に読み伝えること。
一方、ニュースキャスターは話し言葉で送り手と受け手のパイプ役に
なり、その個性が発揮できる。

その反面、客観性の高いニュースを私見という目線が入ることで厄介なことも
起きる。
その厄介な事が色んな人に誤解を招いてクレームに繋がるらしい。

その際たるものが、「出家詐欺」ねつ造放送騒動だ。

寺院で「得度」という儀式を受けると戸籍の名義が変えられるのを悪用した
「出家詐欺」が広がっているという報道で、「やらせ」とか「過剰演出」があったと
クレームが付き、クローズアップ現代の汚点になってしまった。

現場での人材育成に最適なものがこの番組にはある。
それは、試写が二回あることだ。
若い担当者が作成したレポートを他のスタッフと議論してダメ出しをされて、
自分の視点との違いを知り、さらに深く突っ込んだ議論になる。
前日に一回目、そして当日の昼に二回目の試写を行い、生放送本番に向かう。
クローズアップ現代は試写が一番面白いと言う関係者もいる位に熱を帯びる。

その試写2回を得て本番という流れを23年間続けてきた
著者は改めて感じるという。

クローズアップ現代の役割は、物事を「わかりやすく」して伝えるだけでなく、
一見「わかりやすい」ことの裏側にある難しさ、課題の大きさを明らかにして
視聴者に提示することだと。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 自伝
感想投稿日 : 2017年6月11日
読了日 : 2017年6月11日
本棚登録日 : 2017年1月20日

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