大密室

著者 :
  • 新潮社 (1999年6月1日発売)
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本棚登録 : 81
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7人の著名ミステリ作家による密室をテーマにしたアンソロジー。本書が発表されてからずいぶん時が経っていることもあり(エッセイで自虐的なまでに謙遜していた倉知淳は本格ミステリ大賞を受賞し、北森鴻は亡くなった、まるで大昔だが本書は1999年発売)、ここにある作品のほとんどは各作家名義の短編集に収められている。未だに本書でしか読めないのは倉知淳の「揃いすぎ」ぐらいか(未確認)。よっていくつかは既読であったがせっかくの機会なので読み直した。

個人的な好みからあまり好きではない作品も(ひとつ)あるが、いずれも各作家の個性が光り、それが多様性を産んでいてとても興味深い。加えて、作品の後の密室に関するエッセイもまた良いアクセントになっていてこれも読みどころである。各作家のファンは、作品自体を既に読んでいたとしても、このエッセイだけを目当てに一度目を通しておいても損はない。

掲載順も良い。機械的な物理トリックをド直球で投げ込んだ有栖川有栖に始まり、様々なヴァリエーションを展開しながら一貫したテーマの各作品が連なり、完全に怪し気な山口雅也で終わる構成は、良く出来たハード・ロック・アルバムを思い起こさせる。何のことはない、単なる作者名の50音順なのだが、偶然というにはちょっと出来過ぎのようにも感じる。

ちなみに本書は既に文庫化されて、その際、西澤保彦の「怪獣は密室に踊る」が加えられていてお得となっているが、つい先日「怪獣は〜」が所収された『笑う怪獣 ミステリ劇場』を読んだばかりなので個人的には何ら問題はなく、そもそも「怪獣は〜」自体がちょっとアレなのでやっぱり問題はない(どれにも似ていないのであっても良い)。加えて、まるでヘヴィ・メタルのアルバム・カヴァーのような表紙イラストの単行本の方が素敵(扉の印刷もイカス)という理由で本書にも多いに価値はある、と勝手に思っている。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2012年11月5日
読了日 : 2012年11月5日
本棚登録日 : 2012年11月4日

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