太平記<よみ>の可能性 (講談社学術文庫)

著者 :
  • 講談社 (2005年9月10日発売)
4.35
  • (9)
  • (5)
  • (3)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 82
感想 : 6
5

楠木正成の実像を知るために、三冊を同時に読み始めました。しかし本作は史実を詮索することがテーマではなく、芝居や講談で繰り返し再生され、現在も日本の社会や国家を呪縛している楠木氏的な物語がテーマです。それは太平記に起源を持ち、近世、近代に流通するフィクションとしての南北朝の歴史であり、その影響力は、同時代の思想家の言説とは比べようもなく、言い換えれば「南北朝時代史」という物語が思想家や学者の言説を構成しているとしています。本書では具体的にそのことを述べていきますが、非常に面白い内容です。私は太平記の歴史が幕末には共有されていたため、尊皇攘夷というスローガンで簡単に倒幕が出来たのではないかと理解しました。また正成の実像に迫るヒントも与えてくれました。何度でも読むであろう学術書です。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2015年2月15日
読了日 : 2015年2月14日
本棚登録日 : 2015年1月29日

みんなの感想をみる

ツイートする