あられもない祈り

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著者 : 島本理生
baronpoupeeさん 余韻の残る切ない作品   読み終わった 

相変わらず、島本さんの文体は読んでいてとても居心地が良いなぁと思います。

今作はその居心地の良さに加えて、不思議な感覚が芽生えました。というのも、始終、回想しているかのような、静けさを感じる文体なのに、行間からはあふれんばかりの情熱が感じられました。まとわりつくような熱気とひややかな静謐。
この矛盾する印象はなんだろう。

固有名詞のない「わたし」と「あなた」がいることで、まるで自分自身についての物語のように感じてしまうからでしょうか。

この作品は、筆者のいうように「自分を大切にできなかった主人公が生きるために欲望を得るまで」を描いた内省的な物語です。恋愛というのはその一過程に存在しているに過ぎず、著者の代表作である『ナラタージュ』ほどには恋愛がメインではないと感じました。

誰も彼もが不器用で、自らのどうにもならない気持ちを持て余していて、弱い。
きっと、わたしもあなたも直樹もちょっと見方を変えれば前向きな生き方ができそうなのに、お互いの中で良い気持ちの循環をつくりだしていくことができないでいます。そして、そういう人達ってきっとたくさんいて、その、ちょっと壊れかけた感じというのは誰もがもっている当たり前のものなのかもしれません。

「わたし」がどうなっていくのか、その答えは現実の私自身の中にあるような気がします。

島本理生さんの新しい挑戦なのかな、と思いました。
彼女の小説家としての挑戦を見届けたい方にとっては必読の一冊になるでしょう。

最後にこの度はゲラ本のプレゼントを頂戴し、ありがとうございました。30名の中に選んでいただいて大変嬉しく思います。

レビュー投稿日
2010年5月5日
読了日
2010年5月4日
本棚登録日
2010年5月4日
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