身体から革命を起こす (新潮文庫)

  • 新潮社 (2007年8月28日発売)
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感想 : 23
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以前から、武士はどのようにして、真剣で立ち会っていたのだろうということが、たいへん気になってしかたがありませんでした。時代劇のチャンバラのような動きはあり得ないし、剣道のように真剣を扱えば、互いに深手を負うどころか、たちまちどちらも命を落としてしまうでしょう。で、あるときテレビで甲野先生をお見かけしました。そのときの先生の動きは、常識を覆すものでした。打ち込まれてきた剣をすりとかわし、同時に小刀を相手の手首、喉元につきつけていました。
先生は古文書や秘伝書の類を研究し、自らも古武術の動作、技を修得されている方です。本書を読むと、かつて日本人は西洋人とは異なる身体の使い方をしていたことがよくわかりました。例えば、重いものを持ち上げるとき、先生の腕や足、腰などに負荷はかかりません。それどころか、足の裏でさえ負荷が計測されないのです。特定の筋力を用いず、どうやら身体の各部分がそれぞれ違った動きをし、全体で大きな力を生み出しているようです。身体をひねったり、うねらせたり、膝に力をためたりして、その反動で勢いをつけるという、我々が常識としてとらえている筋力的な動作とは相反するこのような動きは、現代の科学では説明のできないことのようです。
先生の研究や動作は、いまでは野球や陸上競技をはじめとするスポーツ界のみならず、介護やロボット工学、舞踊や楽器の演奏、宇宙開発やカウンセリングやビジネスなど、いろんな分野で応用されているようです。にもかかわらず、先生は常に自らの考えや成果を否定し、さらに上の段階を目指しておられます。
自分も学生時代はずっと運動部に所属していましたが、そのころ先生の存在を知っていればと悔やまれてなりません。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 思想
感想投稿日 : 2014年5月15日
読了日 : 2014年5月15日
本棚登録日 : 2014年5月15日

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