過去を振り返る話であり今も主人公が無事なことは物語の始まりでわかってはいるのだけれど、主人公生島の行く末が気になりすぎて一気に読んでしまった。「アマ」の裏社会の闇が深くて広くて、彼と一緒にどきどきしているしかなかった。
雇い主のおばさんが気を使ってくれていること以外、登場人物が何を考えているか、生島にはわからない。彼らは言葉を操るなんてことはしないし、わかりあえるとも思っていない。わが身を差し出すことでしか表現できない、肉体しか持っていないひとたち。お金で解決しない底辺。
そんな「アマ」の世界に圧倒される一方で、自称「すかたん」の生島についての感想。最後の待ち合わせで喜ぶアヤちゃんにイライラするって、そうとう自分ばっかりの男ですね? けれどそれを隠そうとしてないから読んでいて奇妙な爽快感があって、どこかかわいい男なんだろうという気がしてしまう。これは作者の技量なのだろう。堕落願望を抱える読者がふらふらと吸い寄せられてしまう、こんな世界を書き上げてしまうとはいけない人である。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
日本 - 小説/物語
- 感想投稿日 : 2012年11月15日
- 読了日 : 2012年11月14日
- 本棚登録日 : 2012年11月15日
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