ときどき見る、「つじつまの合わない嫌な夢」の要素がてんこもりの幻想短編集。目的地に着けない、仲間外れにされる、出まかせを言ってやり過ごそうとしてできない、怪我をするけどなぜかすぐに手当てしない、何かから逃げるけれど逃げ切れるのかわからない、などなど。焦り、不安、恐怖、羞恥、読んでいてひたすら辛かった。
このうまく立ちまわれていない感じ、世界と自分がしっくりこない感じから穂村弘の『世界音痴』を思い出したのだけれど、同じ要素を持ったこの二冊のなんと違うこと。『世界音痴』は「あるある~」と笑って共感できて、自分の中の主人公と重なる部分をもっと可愛がりたいような気持ちにさえなった。それに比べて、『孤島夢』の各話の主人公がじりじりと生成する「俺はダメだ」感は、ほかにはない強烈なもので、とても落ち着いて読んでいられなかった。
これだけ「なにか間違えちゃった感じ」を延々追求した島尾敏夫だから、『死の棘』が成功したのかなと思った。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
日本 - 作品集
- 感想投稿日 : 2010年11月11日
- 読了日 : 2010年11月11日
- 本棚登録日 : 2010年11月12日
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