公共哲学 政治における道徳を考える (ちくま学芸文庫 サ 28-1)

  • 筑摩書房 (2011年6月10日発売)
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感想 : 30
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一般人には難易度が高い公共哲学の小論集

この本は過去にサンデルが雑誌などに寄稿したりした小論をまとめたものになっている。
白熱教室で興味を持ち,片っ端からサンデルに関する本を読んでいる中で読んだ一冊。『これからの「正義」の話をしよう』,「それをお金で買いますか」,「サンデルの政治哲学」を既に読んだが,これらの本と同じようなものをこの本に期待すると失敗する。

この本は小論だけあって,内容の難易度は高い。さらに,この本はただ翻訳しただけで,訳者の解説などは一切ないので,公共哲学に関する予備知識がないと理解するのが難しい場面が多々ある。

前述の書籍では,一般読者を想定しておりサンデルや小林正弥による詳しい解説や比較的わかりやすくて易しい議論がなされており,公共哲学に関する知識が少なくても比較的読んで理解できる。しかし,この本ではそうした一般読者を想定した解説が少なく,深い内容を議論している箇所も一部あり読むのが難しかった。特に最初の100ページくらいである第一部では,過去100年くらいのアメリカ政治における政治哲学の流れについてひたすら展開されており,読んでいてつまらなかった。

書かれている内容が小論なのもあり,各テーマでの議論は浅いままで終わっている印象をもった。個人的にはこの本はおすすめしない。
サンデルの考えやコミュニタリアンの正義論について知りたければ,「サンデルの政治哲学」がおそらくサンデル関係の書籍ではベストだし,過去のサンデルの書籍全てに言及しているだけあって,この書籍で書かれていた小論のテーマもほぼ触れられていたと思う。
自由原理主義・市場主義の批判に対しては,「それをお金で買いますか」でわかりやすくてより深い議論がなされている。
それ以外の議論については,「これからの正義」で概ね扱われている。

一部,他の本でほぼ触れられていない内容)刑事裁判で被害者の陳述を許可するかどうかの議論)もあるにはあるが,別にそこまで深く取り扱われていないし,そのためだけに読むのはもったいない。
公共哲学について勉強してる人か,サンデルのことがよほど好きな人でない限り,この本を読む必要はないだろうと思った。素直に,一般向けに書かれた他のサンデルの本にあたることを強く勧める。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: Justice
感想投稿日 : 2016年8月12日
読了日 : 2016年8月12日
本棚登録日 : 2016年8月12日

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