エル: 全日本じゃんけんトーナメント (GENTOSHA NOVELS 幻冬舎推理叢書)

著者 :
  • 幻冬舎 (1998年2月1日発売)
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感想 : 8
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紋切り型・パターナリズムに満ち満ちた人間どうしの
非・実存的な世界においては
男女関係、友人関係、親子関係、その他もろもろの社会関係すべてが
どこかで見た光景の「再演」にすぎない
そんな中、かろうじて素の自分を垣間見れる場所があるとするなら
それは、シンプルな勝負事の世界だけだ
ギャンブルにのめり込む人たちがあとを立たないのは
そういう事情があってのことなのかもしれない

そのような世界にあって真に強者と呼ぶべきは
ギャンブルの構造を本質まで把握し、裏から操作できる胴元…
ゲームマスターをおいて他にないだろう
「エル」はゲームマスターと、それに踊らされる人々の物語である

いけすかない話である
しかし98年の発表当時には
風刺として、ある程度の説得力を持っていたかもしれない
後に乱発されるデスゲーム小説の草分けとも言える
(あとがきでは福本伸行「カイジ」にも言及している)
また、デビュー当初「人間が書けてない」として
ずいぶん批判を受けたという作者だが
しかしこの作品においては
人間の書けてなさがプラスに働いているようにも思える

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感想投稿日 : 2013年7月20日
本棚登録日 : 2013年7月20日

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