僕はパパを殺すことに決めた 奈良エリート少年自宅放火事件の真実

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  • 講談社 (2007年5月22日発売)
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この事件があった当時は日本にいなかったので、事件の報道などはほとんど見聞きしていない。だが、少年犯罪のルポなどを読むと、必ずと言っていいほどこの奈良の事件が引き合いに出されていたので、ずっと気になっていた。

この16歳(当時)の少年は、もちろん放火して3人の命を奪った加害者ではあるが、同時に被害者でもある。
少年を自分の所有物としてしか見ていなかった父親がすべての元凶だといって間違いないだろうが、経過を見るに、たぶんこの父親も同様の抑圧された環境の中で育ったのだろう。負の連鎖があったことは想像に難くない。

少年は、昨今の少年犯罪でよく取りざたされる発達障害の一つ「広汎性発達障害」の診断を受けていた。
私が誤解してほしくないと思うのは、アスペルガーや高機能自閉、広汎性発達障害など、発達障害そのものは決して犯罪を犯す原因ではないということだ。ただ、この障害の特性から、犯罪につながるリスク要因となりやすいこと、周囲の無理解がそれを助長することがあるのは事実。
だから同じような悲劇を生まないためにも、是非、身内に発達障害者がいるという人だけでなく、一般社会でももっともっとこの障害について理解とサポートを深めてほしい。
現に、正しいサポートを受け、彼らの持つ才能を発揮して社会で活躍している発達障害者だってたくさんいるのだ。

少年が少年院を出て社会復帰する時、父親は息子を引き取ることを希望しているそうだが、そのためには父親自身の問題を解決させておくことが絶対条件だろう。
この親子の行く末が案じられる。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説以外(エッセイ・ノンフィクションなど)
感想投稿日 : 2011年10月24日
読了日 : 2011年10月23日
本棚登録日 : 2011年10月24日

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