ネクスト・マーケット 「貧困層」を「顧客」に変える次世代ビジネス戦略 (ウォートン経営戦略シリーズ)

  • 英治出版 (2005年9月1日発売)
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世界中の最も貧しい人々に対して,我々は何をしているのだろうか?
あらゆる人々に恩恵をもたらす包括的な資本主義をなぜ作り出せないのか?

・シンプルな提案.
「貧しい人々は犠牲者であり,重荷である」という先入観を捨て,「彼らは内に力を秘めた創造的な起業家であり,価値を重視する消費者である」と認識を改めれば,ビジネスチャンスにあふれた新しい世界が開かれるということ.

・大企業は独自の論理によってBOPを開拓できるチャンスを見落としている.
仮定
①貧困層は資金がなく,われわれのターゲット顧客ではない.
②貧困層は,先進国で売られている製品を必要としない.
③技術革新を評価し,対価を払うのは先進国だけ.
④BOP市場は,多国籍企業が長期にわたって成長するうえで必要ではない.
⑤やりがいという面で,BOP市場を担当する管理職を採用するのは難しい.

・消費力を作り出す3つの原則.
①手ごろな値段.使いきりパックなど.
②製品・サービスへのアクセス.販売パターンを貧困層の住地域や労働形態に合わせる.
③入手のしやすさ.

・BOP市場におけるインベーション12の原則.
①コストパフォーマンスを劇的に向上させる.単に価格を下げるだけではいけない.コストパフォーマンスを30~100倍ほど向上させなければならない.もちろん,これが可能になるのは市場が広大で,世界的な展開が見込め,リスクに見合うリターンが大きい場合のみである.
③規模の拡大を前提にする.BOP市場の将来性を追及するなら,多国籍企業とNGOの双方が抱いている「相手よりも優位に物事を進めたい」という論理を捨てなければならない.多国籍企業は,NGOや地元の地域社会に拠点を置く組織と連携する必要がある.
⑤求められる機能を一から考える.わずかな変更ではダメ.
⑥提供するプロセスを革新する.潜在顧客へのアプローチ,販売,アフターサービス,物流体制など.「何を提供するか」と同じくらい「どのように提供するか」が大事.
⑧顧客の教育を工夫する.「メディア・ダーク」.BOP市場を開拓するうえで,教育が欠かせない.政府,学校などとの協力.
⑨劣悪な環境にも適応させる.たとえば,「浄化された」水も,非衛生的な容器に入れられれば意味がない「ラスト・ステップ問題」.
⑫これまでの常識を捨てる.

・BOPが従来からある考え方に疑問を投げかけたりするほどの魅力があるのだろうか?
②特定地域で起こしたイノベーションの多くは,他のBOP市場にも転用できる.

・企業活動
①サムスンやLGがインドの携帯電話事業で学んだ教訓は,年2~5%ではなく,年50~100%といった成長率に対して順応しなければならないということ.

ユニリーバは,ある市場,たとえばインドを,「インドと同じような」市場のための実験市場とみなしている.

・国の取引統治力
ほとんどの発展途上国は,汚職がもたらす真の代償や,民間企業の発展や貧困の緩和に及ぼす影響を十分に認識していない.公正に実施される法制度で商取引を促進する能力が,民間企業の発展に欠かせないのだ.これを,「国の取引統治力」と呼び,向上が欠かせない.

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ビジネス・経済
感想投稿日 : 2010年1月15日
読了日 : 2009年1月6日
本棚登録日 : 2009年1月6日

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