集中力 (角川oneテーマ21 C 3)

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  • 角川書店 (2000年12月1日発売)
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4

集中力
谷川浩司
2000年12月1日初版発行
2017年7月17日読了

第一部
トップ棋士の条件
トップ棋士への道
第二部 勝負に勝つ能力を伸ばす
集中力、思考力、記憶力、気力

1962年生。
加藤一二三に次ぐ史上2人目となる中学生(14歳)で四段プロになり、21歳で当時史上最年少で名人位を獲得。「十七世名人」として永世名人の資格を持つ。終盤の寄せの速さから「光速の寄せ」の異名を持つ。

羽生善治のライバルとして数多くの対局をこなす。既に公式戦で115局以上(執筆当時)。年齢は羽生さんの8歳上。
世代でいうと、大山康晴、米長邦雄、中原誠、に次ぐ世代として次代の羽生世代とも数多く対局をこなしている。

読んでいて思ったのは勝負の世界で結構な苦労人という印象。
21歳という若さで名人になった後のスランプ、まだ昔ながらの「豪傑」が住まう時代の将棋界(昔はプロ四段になれば後は本人次第で何をしても良い。酒やギャンブルに没頭する人も)、羽生善治という最強棋士の台頭、そして嫉妬。
阪神淡路大震災での被災。羽生さんの七冠制覇を許すことになった相手が谷川浩司でもある。など。

そうした谷川浩司九段の考えが見えたのは興味深かったです。
勝負の世界の厳しさを谷川浩司の経験値から語っているのだけど、その裏側には人としての弱さもあるのかなあ。と感じる言葉もありちょっと意外に思いました。スランプの時、また羽生さんに対する過剰意識から羽生さんのような真似をして、ますますスタイルを崩してしまったとか

勝負においてリードしてる局面からやや後退してしまった時にまだ五分以上の局面なのに「自分はどちらかというと悲観的になるタイプ」とも言っており、強靭な精神力の持ち主や楽観主義者ではない事が書いてあって知らない谷川浩司の一面を知れました。

他にも棋士として羽生さんも語っている捨てる力=忘れる必要性とか、棋士は基本的に自分で考え抜く力がないと上には行けないとか、効率性だけを求めたやり方は結局は力にならない、自分から「やろう」と考える強さが必要など実生活にも生きる話もあります。
勝負における谷川流の理論を学べる一冊。中々の良書です。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2017年7月17日
読了日 : 2017年7月17日
本棚登録日 : 2017年7月17日

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