小説 母と暮せば

  • 集英社 (2015年12月4日発売)
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本棚登録 : 118
感想 : 15
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映画「母と暮らせば」のノベライズである。
夫に先立たれ、長男も戦死してしまった伸子は、次男の浩二と二人で暮らしていた。
いつものように浩二は学校へ出かけたまま、二度と伸子のもとには帰ってこなかった。
8月9日、長崎に落とされた原爆によって浩二が命を落としていたからである。
浩二の死から三年。
ようやく浩二の生存を諦めた伸子の前に浩二が現れる。
亡霊となった浩二と伸子の、奇妙な二人暮らしがその日から始まった。

戦争は悲惨だ。
そして、あたり前のことだけれど一度失われた命は二度と戻ってこない。
伸子が思わず口にした言葉。
何故生き残った町子が幸せになり、浩二は死んだのかと。
代わってくれたらよかったのにと。
何十万という人たちの命が戦争によって奪われた。
ひとりひとりに大切に思う人がいたはずだ。
そして誰かの大切な人だったはずなのだ。
愛も絆も、命すらも、戦争はいとも簡単に断ち切ってしまう。

結末があれで良かったかどうかはわからない。
ただ、きっと伸子は幸せに満ちて旅立ったのだと思う。
そう思わなければ哀しすぎてたまらない。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 一般小説
感想投稿日 : 2017年6月7日
読了日 : 2017年6月7日
本棚登録日 : 2017年6月7日

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