遭難者の夢―家族狩り〈第2部〉 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (2004年2月28日発売)
3.59
  • (115)
  • (204)
  • (365)
  • (16)
  • (2)
本棚登録 : 1623
感想 : 106
4

徐々に壊れていく家族や個人。
電話相談に寄せられる叫びは、ときに切羽詰った状況で相談員にはどうすることもできない。
子どもが両親と祖父を殺害し自殺した・・・と思われている事件では、事前に電話がかけられていたにもかかわらず、誰もその重要性には気づかない。
異様な現場を見たために精神の安定を欠いてしまった美術教師。
彼はその後、あらたな事件に巻き込まれ内なる恐怖を抱えながら生活することになる。
児童相談員は、保護してきた少女の父親とのトラブルに悩んでいる。
どうしたら少女のためには一番いいのか、いまできることを考えながらも、ずっと保護し続けることなど出来ない現実も理解している。
一家4人が死亡した事件の捜査を諦めきれない刑事は、かつて自分が逮捕した男が出所したことを知る。
実の子どもを虐待し収監された男は、刑事の家や子どもの学校にも姿を現すようになった。
復讐、そして元妻を取り戻すこと。
それが男の狙いだった。
生まれたときから人は一個の個人として尊重されるべきものかもしれない。
でも、実際には親の加護がなければ一日だって生きていくことはできない。
その過程で、まるで所有物のように錯覚してしまうこともあるだろう。
子どもは子どもなりに考えている。
何も考えていないわけではない。十分に考え、そして感じているのだ。
親子の関係は身近すぎて他者からは本当の関係性などみえないと思う。
どんなに幸せそうに見えても、どんなに不幸そうに見えても、当事者が何を感じているのかなんてわからないはずだ。
児童相談員の虐待児童への過剰な対応。
刑事の子どもが絡む事件への異常な執着。
美術教師の家族への本能的な嫌悪感。
第3部ではどんな展開が待っているのか。
出来るならば救いのある結末であってほしい。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ミステリー
感想投稿日 : 2017年3月14日
読了日 : 2017年3月14日
本棚登録日 : 2017年3月14日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする