大事の前の小事。大切をなそうとするためには、小事にはかまっていられない。だから多少の犠牲は仕方がない。
こんな考え方が正しいと信じている人間が大嫌いだ。
その「犠牲」とやらが自分たちの愛する人だったとしても、平然と同じことが言えるのだろうか。
自分たちにはまったく累が及ばないと思うからこその考えだと思う。
過酷な環境で育ってきた津原は、何かあると自らが一歩引いてしまう。
遥への恋心も、後輩である大河内の気持ちに気づいてしまい、押し殺そうとする。
大河内も遥の津原への恋心に気づいている。
つまり、大河内さえいなければ・・・身を引いてくれれば・・・津原と遥は両思いなのだ。
けれど大河内は諦めない。
津原の気持ちに付け込み、遥の恋心には気づかないふりをして、遥の一番近くにいようとする。
純粋だと言えば聞こえはいい。
でも、どうしても狡さを感じてしまう。
大人の男として練れていない中途半端な想いが、悲劇をより大きなものにしてしまったことに、大河内は気づいていただろうか。
こんな結末でいいのかという思いはある。
どこにも津原には救いの道が残されていない。
遥さえどこかで幸せになってくれていたら、津原の人生も違うものになったかもしれないのに。
他人の幸福を何の痛痒も感じずに踏みにじる輩に、人の上に立つ資格など絶対にない。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
警察小説
- 感想投稿日 : 2017年3月2日
- 読了日 : 2017年3月2日
- 本棚登録日 : 2017年3月2日
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