何故だろう。
被害者である晴菜にも、母である朔子にも、まったく共感できなかった。
出会い系サイトで知り合った晴菜と彰。
二人とも嘘のプロフィールを作成し、やがて実際に会うまでの仲になっていく。
結婚していながら出会い系サイトを利用し、夫に内緒で彰とメールを通じて何回も会うようになる晴菜。
高校生なのに年齢をごまかし、人妻である晴菜とのデートを楽しんでいた彰。
嘘のうえに成り立っていた二人の関係。
そこに真実があるわけもなく、徐々に彰にのめり込んでいった晴菜には彰を責める資格はないと思う。
まして夫との結婚生活が思うようにいっていないからといって、どうして短絡的に「彰と結婚」と思えるのだろうか。
まるでそうすることが当然のような晴菜の言動が理解できない。
朔子と晴菜にもやはり微妙な距離感を感じた。
母と娘の関係は複雑で、愛情はあってもそれが直接的に感じられることは、何か起きたときでなければなかなか難しい。
遺された手紙を読むと朔子がそれ相応の気配りが出来る人だったことがわかる。
それでも、真実を見極める前に起こしてしまった不条理な行動は、母としての盲目的な愛情によるものなのだろう。
親の愛情は深い。どこまでいっても、たぶんそれが涸れることはない。
朔子は許されないことをした。間違った行動だったし、そもそも朔子を動かした決定的な事実そのものが勘違いだった。
心の中に「無駄死」という言葉がふっと浮かんで消えた。
母娘の絆はときに美しく、ときに怖ろしい。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
ミステリー
- 感想投稿日 : 2017年3月2日
- 読了日 : 2017年3月2日
- 本棚登録日 : 2017年3月2日
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