キタイ

著者 :
  • 幻冬舎 (2006年1月1日発売)
3.36
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本棚登録 : 78
感想 : 24
3

死者が生き返って戻ってくる。
それはいったいどういうことなのか。
18年前に死の病に罹っていた仲間が死んだ。
彼を復活させるために、仲間たちは死者を甦らせる儀式を行う。
だが、それは果たして生き返るということになるのか。
自分であって自分ではない何者かが、ずっと自分の中にいる。
いつの間にか、本当の自分が誰なのか。
わからなくなってくる。
人の記憶とは、ひとりひとり違っている。
たとえ同じ体験をしたとしても、100人いれば100通りの記憶が出来上がる。
では、いま記憶していることが本当に自分に起きたことなのか。
実はどこかで入れ替えられていることはないのか。
不気味な展開は、妙な不安定さを心の中に残していく。
深町の人物描写がいまひとつ物足りなかった。
もう少し踏み込んでいれば、もっと葛西との関係やハルへの思いも強烈な印象を残しただろうと思う。
けれど、忍び寄る恐怖…といった点では、いかにも日本的なホラーだといえると思う。
すぐ近くに葛西がいたとしても気づかないかもしれない。
見えている葛西が実体を伴うものなのか、自信が持てない。
種明かしがされるまでに感じる不気味さは、この物語の読みどころだと感じた。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ホラー小説
感想投稿日 : 2017年4月22日
読了日 : 2017年4月22日
本棚登録日 : 2017年4月22日

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