文庫 女子高生コンクリート詰め殺人事件 (草思社文庫 さ 2-1)

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  • 草思社 (2011年4月12日発売)
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昭和63年11月25日夜、アルバイト先から帰宅途中に突然連れ去られた女子高生は、その後長期間にわたる監禁生活を強いられ、凄まじい暴行の末に命を絶たれた。
遺体はコンクリート詰めにされ捨てられた。
犯人は4人の少年。
監禁生活の最中に10名を超える人間が暴行に加わっていたとされる。
こんな悲惨な結末になる前にどうにか出来なかったのか。
純粋な疑問がわいてくる。
監禁されていた場所は人里離れた廃墟などではない。
住宅地に建つ一般住宅である。
しかも、犯人である少年の両親も同居していた。
にも係わらず、誰にも救いだされることなく女子高生は命を奪われた。
少年犯罪が起きたとき、必ず言われるのは育ってきた家庭の環境である。
両親の育て方が悪かったのでは?とメディアは騒ぎたてる。
すべての少年犯罪が親のせいにされたら堪ったものではないだろう。
けれどこの事件の場合はどうなのか?
裁判ではいろいろと理由をつけていたようだけれど、結局のところ、この両親は息子の暴力が怖くて踏み込めなかったということだと思う。
子どもの生活のすべてを親が把握しているはずがない。
それはあたり前のことだし、格別珍しいことでもないだろう。
しかし、同じ家の中に長期にわたって監禁されていたことに気づかないはずがない。
何らかの不自然さ、違和感を感じていたはずだ。
それでも彼らは見て見ないふりをした。
殺害までは予想出来なかっただろうが、不穏な空気に反応して行動していれば・・・と思う。
この事件でサブリーダー格だった少年は、出所後ふたたび事件を起こし監禁致傷罪で逮捕されている。
冒頭に書いた裁判官の言葉は、彼には少しも届いていなかったようだ。
何しろ、「女子高生コンクリート詰め事件」を一種のハクのようにひけらかしていたと言うのだから。
少年法が厳罰化するひとつのきっかけになった事件である。
家に帰るために自転車をこいでいたひとりの女子高生。
退屈していた少年たちの目に留まったことが彼女の運命を変えてしまった。
長く辛い時間の果てに待っていたのは無惨な死。
やりきれない。こんなことが許されていいのか・・・と思う。
現実には4人ともすでに出所して社会復帰をしている。
もしかしたら家庭を持って親となっているかもしれない。
死んだ者の時間は永久に動くことはない。
けれど、犯人たちの時間はいまこのときも時を刻んでいる。
「罪を憎んで人を憎まず」ということわざがある。
刑に服したことで罪は償ったのだから、という人もいるだろう。
どうか4人には彼女の死を無駄にせずに懸命に毎日を過ごしてほしい、と思う。
そうでなければ、無念の死を遂げた彼女があまりにも浮かばれない。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ノンフィクション
感想投稿日 : 2017年3月2日
読了日 : 2017年3月2日
本棚登録日 : 2017年3月2日

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