せんねんまんねん (まど・みちおの絵本)

  • 理論社 (2008年3月1日発売)
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本棚登録 : 214
感想 : 17
5

タイトルから思い浮かべたのは、長寿だった。

鶴は千年、亀は万年。

そして、著者のまど・みちお氏自身も100歳を迎えている。

実際は、ひとつのものが長く生きる物語、とはちがう。

帯にあるように、

  <いま>は、<永遠>へとつづいている……

見返しにあるように

  あらゆる いのちと

  あらゆる ことは

  めぐり めぐり

  からまりあい

  ささえあい

  つながりながら

  つづいている……

といったことを象徴する世界が展開されている。

本書は、まど・みちお氏の詩「せんねん まんねん」
(初出:1972年 雑誌『びわの実学校』
 1973年『まど・みちお少年詩集 まめつぶのうた』(理論社)収録)
に、柚木沙弥郎(ゆのき・さみろう)氏が絵をつけたものである。

詩も絵も存在感があり、
それぞれの強烈な個性が沸々と沸き立っている。

詩自体がダイナミックな生命の営みを描いており、
絵もそれに負けない世界観を表現している。

原色ではないのに、
淡い水彩の世界が、濃いものに感じられるのだ。

このつながりは、単純な食物連鎖だけを描いているのではない。

捕食関係も描いているが、そういった外側だけの関係ではなく、
視点が途中で内側で何が起こっているのかに移っていく。

自分の体の中に流れているものの意味を考える。

途中までは、ゆっくりゆっくり
ひとつのフレーズにひとつの見開きだったのが、
連鎖がひとつの見開きに収まるシーンが出てくる。

ここで急激にリズムが変わり、はっとさせられる。

その次に一息ついて、
「まだ 人が やってこなかったころの」というフレーズ。

それが、人がこの連鎖に及ぼした影響の大きさを物語る。

私たちは、この大きな流れの中のわずかひとしずくで、
それでもこの流れの中につながって確かに生きてきたのだ。

そして、これからも生きていくんだ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 絵本
感想投稿日 : 2010年1月17日
読了日 : 2010年1月17日
本棚登録日 : 2010年1月17日

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