木を植えよ! (新潮選書)

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  • 新潮社 (2006年11月22日発売)
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 木を植えること自体の重要性と必要性はもちろん言うに及ばず、です。


 ここで重要な指摘は『多層群落』という考え方。『すなわち高木、亜高木、低木、下草、土壌生物群』による垂直のセットです。階層生がはっきりしながら、お互いに補完関係にあり、持続的に維持されているシステム。最近よく聞く『多様性』とは似て非なるものです。多層群落が「垂直方向のシステム」だとすれば、多様性はいわば「水平方向のバリエーション」だからです。

 ただし、階層であって階級ではない。それぞれがそれぞれの役割を果たしながら、重層的になっている。実はこうした社会が自然なわけで、一億層中流のなかでの好き嫌いあるいは趣味のレベルでの『水平な多様性』なんかは、ほんとうは大して重要じゃないのかもしれません。

 またもう一つ考えさせられたのは、福島第一原発事故による避難区域のこと。除染が終わってインフラが再整備されて、さあ帰還しろと言われても、それでは社会として機能しない。それは言ってみれば高木だけを植えて植林が終わったというもんだろうと思った。被災地に「多層群落」的社会を再生するには、いったいどうしたら良いんだろう?

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 社会/共同体
感想投稿日 : 2013年12月30日
読了日 : -
本棚登録日 : 2013年12月30日

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