翻訳小説は、どの訳者で読んだか、ということがすごく大きいと思う。やはり最初に読んだ版というのは、一番愛着がわくものだろうと思う。……英文の専門家からは何かと批判の多い大久保康雄だが、こと小説の訳としては、たとえば最近読んだ宇野某の翻訳した版などは、大久保版に遠く及ばないように感じる。本作は他にも何種類かの翻訳があるけれど、ぼくの読んだ限りでは、この大久保版がもっとも、小説文体として、作品の持つ魅力を引き出すものになっていると思う。
ミステリ史に残る、ほとんどパーフェクトに近い傑作だからこそ、未読の方には是非(甲乙付けがたい前作『Xの悲劇』とともに)、この大久保版でお読みになられることをお奨めする。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
小説
- 感想投稿日 : 2010年12月15日
- 読了日 : 2011年10月29日
- 本棚登録日 : 2010年12月15日
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