昔読んだ気がしますが、オペラの予習で再読。
繰り返しが多く、意外とシンプルな作品なので、逆に演出のし甲斐がある戯曲だろうと思います。
妖女なんて言われることもありますが、サロメはむしろまだ未熟な少女で、そこがフィクションとしては美しくも痛々しい。
母娘の関係は希薄で、父は義父に殺され、義父からは性的視線を向けられ、物質的には満たされていても対等な友人もおらず、身体だけは美しく成長して周囲の男性たちはあこがれの視線を向けるけれど彼らに興味はない。そんなところにひたすらに神だけを見つめ彼女を見ようとしないヨカナーンが現れる。「自分を見ようとしない男だから夢中になる」という解釈もできるし、「目に見えない神を信じるヨカナーンの精神的深みが彼女を救いそうになる(でも救えないけど。それとも救ったのかな。)」という風にもとれる。
サロメを自己中心的な狂った美少女として突き放して描くことも、孤独な魂として描くこともできると思うので、舞台によってきっと印象がすごく違いそうです。
アイルランド人がフランス語で書き、自ら英訳し、ドイツ語でオペラとして成功した作品ということで、ヨーロッパの世間の狭さがある意味実感される作品でもあります。
文章はさすがの美しさ。フランス語も読んでみようかなあ。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
ヨーロッパ
- 感想投稿日 : 2013年7月29日
- 読了日 : 2013年7月27日
- 本棚登録日 : 2013年7月29日
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