ティファニーで朝食を (新潮文庫)

  • 新潮社 (2008年11月27日発売)
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感想 : 566
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第二次世界大戦下のニューヨーク。気分屋で天真爛漫、社交界を自在に泳ぐ新人女優ホリー・ゴライトリー。同じアパートメントに住み、そんな階下の住人に近づきたいと願う、駆け出し小説家の「僕」。ある日「僕」の部屋の呼び鈴を押したのは他でもないホリーだった。

オードリー・ヘップバーン主演の映画はまだ見たことがないが、黒いドレスを纏ったオードリーの姿は小説の中のホリーに自ずと重なってしまう。しかし私が勝手に抱いていたイメージよりも、小説のホリーは子供っぽくて弱い人間のように感じた。夜な夜なセレブ達を招いてパーティを楽しむホリーは隙がなくて艶のある女性だが、時に彼女は「僕」の前で素の姿を見せる。それは「いやったらしいアカ」と彼女が呼ぶ不安感に強く怯える姿である。彼女はその不安感を拭い去ることができる場所―それは静かで全てが整っているティファニーの店内のような場所―をずっと追い求めている。

自由奔放であるが、「いやったらしいアカ」に常に恐怖を感じるといった弱い面を併せ持っているからこそ、ホリーがより魅力的な人間のように思えた。海外小説は翻訳された日本語が苦手であまり読むことがなかったのだが、村上春樹の秀逸な翻訳のおかげか、ホリーにとても惹きつけられて思わず夢中で読んでしまった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 生き方
感想投稿日 : 2013年5月18日
読了日 : 2013年5月10日
本棚登録日 : 2013年5月11日

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