和食の知られざる世界 (新潮新書)

著者 :
  • 新潮社 (2013年12月14日発売)
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辻調理師専門学校、辻調グループ代表の著者は今、世界が賞賛する「和食」の未来に大きな希望と一抹の不安を抱いている。歴史的変遷から、海外での成功例や最先端の取組みまで、世界の食を俯瞰的に見つめ続けてきた著者が綴る、和食の真実。

ユネスコ無形文化遺産に指定され、世界から注目される和食に私自身も今とても興味を抱いている。著者は料理界の最前線で活躍されており、広い視野を以て“世界の中の和食”の存在を考えている。「海外で和食が流行している」程度しか知らなかった私は、和食が海外の食文化と見事に融合し、更なる進化を遂げていることにただ驚くしかなかった。料理の最先端の地では、日々刺激的な試みが行われている。本書には写真もなく、著者の描写からしか伺うことができないが、海外の文化に「変換」された和食はどれも意外な工夫が施されていてとても興味深かった。“日本の食”から“世界の食”へと進化している和食から、やはり目が離せない。

著者は和食が異文化で成功するためには「変換力」が必要だと述べている。それは、日本の和食の料理をそのまま海外で提供するのではなく、現地の人々の味覚、現地の食文化や習慣にまで着目し、和食の本質は維持したままで現地の人々に受け入れてもらえるよう、和食の形を変化させることである。この「変換力」は和食のみならず、何かを進化させたり、新しいものを生み出したりするために必要なプロセスであると思う。その為にはまず物事の本質を見極めることが重要である。新たなものを創造することばかり考えていると、そもそもの本質の追究が疎かになってしまう。何かを生み出したい時こそ、今あるものをしっかり見つめることが大切なのだと思った。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 食べ物
感想投稿日 : 2015年1月11日
読了日 : 2014年12月29日
本棚登録日 : 2015年1月11日

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