安部公房がいかにして物語を編むのか、創作の舞台裏をみるような一冊。
彼の紡ぐ世界は、書こうと思って書けるようなものでない。
ピカソの絵をみて、自分でも描けるのではないかと言う人がままいる。しかし、実際描こうとすると、途端に筆が止まるのではないか。描いてはみたものの、「なにか」が違う。彼の絵はデタラメに描いたのでは真似できない、「なにか」を備えている。だから人心を揺する。
例えはピカソでなくてもいいのだが、安部公房の作品の凄みは、ピカソのそれと似ている。意気込んで筆をとってみても、意図した途端に死んでしまう世界。彼はそれに命を吹き込む。それができる作家なのだ。今まで思ってもみなかったことだが、彼の編む世界に欲情した。なんてセクシーなんだろう。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
roman
- 感想投稿日 : 2016年5月9日
- 読了日 : -
- 本棚登録日 : 2016年5月9日
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