罪火

著者 :
  • 角川書店(角川グループパブリッシング) (2009年12月22日発売)
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本棚登録 : 150
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 小学校で校長という職につきながら、「修復的司法」という加害者と被害者が話し合うことで問題の解決を図る試みの仲介役としても活動している町村理絵。実際、殺人を犯してしまった少年が罪をつぐなった後の担任も務めたことがあり、犯罪者も更生できると信じていた。それなのに・・・。娘の花歩が何者かに殺され、理絵も被害者遺族という立場になってしまったのだ。

 この話はいわゆる倒叙もので、読んでいる人間は犯人が誰だか最初からわかっている。そして犯人は、理絵が更生したと信じきっていた若宮であり、このことで犯罪者の更生、「修復的司法」というものの有効性を最初から読者に問いかける。私は今回この言葉や制度を初めて知った。正直、これが成立するのはかなり難しいと思うし、自分が当事者だったらなおさら無理ではないかという思いをまずもったのだが、町村もそんなジレンマに陥っていく。町村の心の動きと共に、犯人側の若宮の心情もつづられていくのだが、これが私はどうも最後までずっと違和感があった。行動や性格に一貫性を感じられず(衝動的に罪を犯す人間とはそういうものだと言われればそれまでだが)、最後まで若宮という人物がつかめなかった。プロローグ部分で”トリック”なんて言葉が使われていたので余計に、「え、もしかして叙述?2人いる?」なんて深読みしてしまった程。結末を読んでみれば「あぁなるほど」とは思うのだけど、なんかしっくりこなかったなぁ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 文芸本(日本)長編
感想投稿日 : 2012年11月7日
読了日 : 2012年11月4日
本棚登録日 : 2012年11月7日

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