被害総額6兆円、四半世紀以上も続いた世界史上最大の「ねずみ講」に関するドキュメント。世界の有名人、王族、そして金融のプロまでが揃ってマドフの詐術に引っかかった。野村證券も320億円やられたという。本書は、「なぜねずみ講のような簡単な手口に名だたる投資家がだまされたのか」という心理面について掘り下げる。それは「人間は集団で狂気に走る」という集団心理〜日本では「赤信号みんなで渡れば怖くない」ともいう〜にほかならず、バブル形成のメカニズムとまったく同じである。マドフが構築したねずみ講が、アメリカのサブプライムローン問題に端を発するバブル崩壊によって明るみに出た現実は、その点でまことに興味深い。心理面に関する考察は読み応えがあるが、一方で果たしてマドフ1人がこれを仕掛けたのか、6兆円はどこに消えたのか(文中では6000億円の資金返還ができなくて破綻したとある)、1990年代から投資家の通報・警告を受けていたSEC(証券取引等監視委員会)はなぜ動かなかったのか....といった事件そのものの謎はほとんど明らかにはされていない。まあ、マドフが1人で罪をかぶって沈黙している現状にあっては、そこまでの中身を求めるのは酷でもあろうが、読後には未消化感が強く残る。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
2011年
- 感想投稿日 : 2011年6月6日
- 読了日 : 2011年6月6日
- 本棚登録日 : 2011年6月4日
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