自殺幇助の話として知られているが、むしろ自殺願望の女性たちの共依存がテーマになっていて、「私自身、少しも生きたくない」という主人公も潜在的に当事者の一人であり、彼女の自殺幇助はある種の代理自殺と言えるかもしれない。主人公は知らずに友人たちを誘惑しながら彼女らに誘惑されてもいるわけで、最終的に「誘惑者」とは幇助する側ではなく、むしろ自殺する側の謂いになり、後者が「神」の側に立つ人間であることを主人公が気づいた時点でその構図は決定的になる。当時の知的エリートたちの歯の浮くような哲学議論や「悪魔学」というチープな小道具には正直うんざりさせられるが、封鎖されたキャンパス、焼け野原の東京、三原山の火口というロケーションと旅の描写が登場人物たちの心の荒涼を暗く彩っていて、怪しい魅力を放つ。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
日本文学
- 感想投稿日 : 2013年9月23日
- 読了日 : 2013年7月15日
- 本棚登録日 : 2013年9月23日
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