日本で一番有名な、某宅急便魔女さんをオマージュした現代魔女の少女・玉城禰子の物語である。オマージュというか、作中でワンシーンのみだが主人公も彼の映画を観ていた旨が描かれているので、この場合はあれを観て育った世代の魔女の物語というべきか。
世界観的には現代日本が舞台ながら、ここでは魔女が本当に存在し、その一方でその存在は時代遅れのものとされている。魔女は街に一人しか住んではならない、という掟もそれを助長しているのだろう。
そうした世界観の中で、一年間の修行をしに田舎の港町に来た少女は、何もできない現実に打ちのめされながら一歩ずつ前進していく。周囲に迷惑を掛けながらも、良き隣人らによって背中を押されて歩みを進める物語像は古典的でいて、スムーズな隙のない展開である。
15歳の少女が一人暮らししていく難しさとは別に、魔法においても目的地までの道を知ろうと魔界の水先案内人を召喚すれば「ここは魔界ではないではないか! ネットで調べろ!」と叱られる体たらくで、一巻においては散々である。
多少のお色気を挟みつつ展開される物語は正統派であり、歩みは遅いながらも前進していく姿は見ていて快い感覚がある。
今はまだ周りに助けられてどうにか進んでいるような状況だが、これからの成長物語に期待したい。ここでは星四つ半相当と評価している。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
ドナドナ
- 感想投稿日 : 2016年7月28日
- 読了日 : 2016年7月28日
- 本棚登録日 : 2016年7月28日
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